Gucci従業員がストライキ、ローマからミラノへの移転で大量解雇か?

フランスの高級ブランドKeringグループの看板ブランドであるGucci(グッチ)のデザイン部門の従業員がローマからミラノへの移転に反対し、ストライキを決行。労働者たちは企業による大量解雇の懸念を表明。従業員と企業との交渉が暗礁に乗り上げ、雇用条件に関する不満が勃発。労使紛争は拡大を見せている。

ローマからミラノへの移転

昨年10月に発表されたローマのデザイン部門をミラノ本社へ移転する計画は、労働者153人の移転を予定しており、これに対して労働組合は不満を表明。労使交渉が破綻した後、企業は個別の合意書を提案したが、従業員の一部は移転条件を不満とし、仕事を失う可能性を懸念していた。また、ブランド拠点が移転するということは、下請け企業の労働者である清掃員、事務処理、倉庫係、運搬作業者も影響を受ける。

Gucciによれば、ローマにはアトリエ、デザインオフィスの一部、およびサポート活動に関連する一部の部門が残る。219人のローマの従業員のうち、移転提案を受けているのは153人。

ストライキの様子

移転に際し、従業員全員が同じ条件の提案を受けていない可能性があるが、どうやら移動への支援が不十分と言うのがストライキの主な理由らしい。この条件を飲むくらいならば、多くの人が転勤辞退や退職を余儀なくされる可能性があり、11月17日に会社の前で抗議宣言のストライキ、11月27日に再びストライキに戻った。

11月27日に、Gucciの従業員約40人が行ったストライキは4時間に渡った。彼らは「偽装大量解雇」を恐れており、ローマのブランド拠点の前で「Gucciは切るが、縫わない」”Gucci taglia ma non cuce” といった横断幕が掲げられた。

Gucciは従業員を切るだけで、縫製しない

ここで「Gucciは切るが、縫わない」”Gucci taglia ma non cuce” というメッセージを紐解いてみる。ここでは、服飾で使う「切る」と「縫う」作業を、人員を「切る」と「縫う=繕う⇒ケアする」ことに掛けていると見える。

「傷を縫う」の表現は文字通りには傷を針で閉じることを指すが、比喩的には誰かや何かの回復やケアする行為である。服で言えば「綻んだ部分を縫う」のは、ケアしながら大事に長く使っていくことを意味している。

ストライキのメッセージ「Gucci taglia ma non cuce」の場合、グッチが従業員を簡単に切り落とすだけで、従業員の状態や影響に十分なケアをしていないという主張を皮肉って表現していると言えるだろう。

なぜ偽装大量解雇なのか

ミラノ移転の決定に従業員の意見は聞き入れられておらず、また移転に際した支援内容は不十分だという。また、人によって条件が違うので、企業側が故意に条件に差をつけて辞めさせようとしているのでは?と懸念がある。従業員がミラノ移転を拒むために退職すれば、ケリンググループは従業員をレイオフする必要がなくなり、つまりは手当を払わずに済む。だから偽装であると。

ローマで学校に行ってる子供のいる人や、介護が必要な親、家のローンがある人も居るのに、意思疎通無しで短期間での引っ越しを迫られている。日本人だったら、ある程度当たり前みたいに感じる会社の決定かもしれないが、イタリアはストする。

そして前述のように事実上の失業は下請け企業にも広がることが予想される。14年間ローマを拠点としていたGucciの部門が無くなるのであれば、ローマだけでなく、ラツィオ州全体の下請け業者への影響がある。

ストライキに対するGucciの親会社、ケリンググループの反応

Gucciはこれらの非難を否定し、今回の移転は現行法を遵守し、経済的および支援策を用意していると主張。しかし、労使交渉の行方や残る66人の従業員の未来には依然として不透明な状況が続いている。

Gucci広報担当者の公式発言は以下の通り。「この移転では人員削減は一切なく、関連するすべての従業員の円滑な転勤をサポートするため、経済的および実務的なサポート措置を含む一連の措置を講じています。これは国内一般企業の労働契約と比較して著しく有利な条件です。また、Gucciはミラノへの移転により、クリエイティブディレクター(Sabato De Sarno氏)および関連するチームが、すでにミラノに拠点を置いているブランドの戦略的機能と緊密に連携することで、必要な相互作用とシナジー最大化を実現します」と明言。

デザインオフィスの一部であるスタイリストや一部のデザインオフィスのチームなどを含む、残りの66人の従業員は引き続きローマで勤務予定。

デザイン部隊はミラノ本社へ

2009年(Frida Gianniniの時代)以来、デザイン部門スタイルオフィスはvia del CorsoのPalazzo Manciniとvia del Banco di Santo Spiritoにある場所にあったが、2024年3月からミラノのvia Mecenateにある本社オフィスに移転することになる。

ミラノ新本社は、2016年にオープンした35,000平方メートルの大規模施設でGucci Hubと呼ばれており、オフィス機能の他、ショールーム、ファッションショーのスペース、撮影スタジオなどを収容している。

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この記事を書いた人

Macaron

海外進出における営業や展示会出展サポート、英語の通訳・翻訳、イタリア語の通訳、ビジネス英会話講師。分からないことを丸投げしたい個人や小規模事業者におススメ。神奈川と石垣島の2拠点で活動。