スクール・オブ・ロックのミュージカル in ロンドン

ブログの更新を完全に放置して国外に暫く脱出していた。飛び立った先は、まずロンドン。目的はWest Endでミュージカルを見ること。三日半の滞在で見たのは4本。結果、その中で「また見たい」と思える最高の印象を残したのが スクール・オブ・ロックのミュージカル だった。

迷いに迷って、滞在の最終日に当日席を買って見たんだけど・・・。見に行ってよかった。

スクール・オブ・ロックのミュージカル 誕生背景

映画「スクール・オブ・ロック」のミュージカル・バージョン

スクール・オブ・ロックは元々、2003年にジャックブラック主演で公開となったアメリカ映画。予想を裏切る大ヒットを記録して、ジャックブラックを一躍人気俳優にした映画でもある。

あらすじ:

ロックスターになる夢を捨てられないデブで不細工な負け犬デューイ。自分が結成したバンドを追い出されてしまった。

友人ネッドとその彼女のアパートに居候状態で同居していたデューイだが、とうとう出ていくか家賃を払うように言われる。切羽詰まったデューイは、ネッド宛にかかってきた有名私立小学校の臨時講師の仕事の話に飛びつく。

ネッドのふりをして仕事を引き受け、ハーバードを目指すような優秀な小学生たちを教える・・・なんて、頭の悪いデューイにそんなことはできるはずもない。しかし、生徒たちの音楽のクラスを聞いて、その才能と能力にピンときたデューイはクラスでバンドを組み、自分を追い出したバンド「No Vacancy」で参加する予定だったバンドバトルに挑戦することを思いつく――――。

 

この映画を相当気に入ったのだろうか、ブロードウェイの舞台に School of Rock を引っ張り出したのは、あのアンドリューロイドウェバーである。

スクール・オブ・ロック ミュージカル版の音楽はアンドリュー・ロイドウェバー

アンドリューロイドウェバーといえば「オペラ座の怪人」とか「キャッツ」とか「ジーザスクライストスーパースター」とかの、あの超有名なミュージカル作曲家。

スクール・オブ・ロックのミュージカル版は、ロンドンではなくNYのブロードウェイで初お披露目となったが、これはアンドリューロイドウェバー作品でジーザスクライストスーパースター以来。ロンドンのウエスト・エンド(2016年~)よりも、ブロードウェイでのミュージカルが1年先に実現(2015年)した。

というのも子供の労働に関してイギリスでは規制が厳しいという背景があったようだ。

イギリスのショービズ 子役の出演事情

スクール・オブ・ロックのメインキャストのなかには子供も多く含まれている。

子供のキャストは全員で12人。イギリスよりもアメリカのほうが子供に対する労働法が緩く、大人のキャストと変わらない条件で採用できる。

したがってメインキャスト+その代役の選出をしておけば、アメリカでは子役でもミュージカル出演に必要な労働時間をカバーでき、問題にならなかった。

しかしながらイギリスのほうは、子供の労働時間が厳しく制限されているため12人x3チームでローテーション公演する必要があった。つまり、36人もの(そのうち半数くらいは飛びぬけて音楽ができる)子役キャストを集め、また練習も3チーム分調整しなければいけない。

ということでイギリス、ウェストエンドでのミュージカル公演には時間がかかったようである。

スクール・オブ・ロック ミュージカル版の見どころ

2003年の映画版が気に入っている人は恐らくジャックブラックのファンだろうから、ほかの役者が主役を演じるミュージカルに不満を持つかもしれない。

だが、そんな映画版のファンでも見てみるべき。

ミュージカル「スクール・オブ・ロック」は、ミュージカル作品としての完成度がとても高い。ステージセットも、演出も、音楽も上手くかみ合っていてバランスが良い。メッセージ性も現代社会にマッチしており、無理なくミュージカル要素に載って伝わってくる。

何よりすべての年齢層の観客にとって、純粋に楽しいと思えるような作品になっている。

ポップでキャッチ―な音楽

音楽系でヒットした映画版に負けないレベルの高いオリジナルソングが、いくつもミュージカル版のスクール・オブ・ロックには組み込まれている。そして、各曲はちゃんと物語を進めたり、人物に奥行きを与えるの役割を果たしているのもポイント。

特にキャッチ―で一緒にコーラスしたくなるポップまたはロックな曲が:

・Stick it to the man

・You’re in the band

・I’m too hot for you

・If only you would listen

どのミュージカルも大体1曲か2曲は口ずさめるような曲が入っているのだけれど、他がイマイチだったり、アレンジが舞台映えしなかったり、ストーリーや劇中の展開に自然にはまっていなかったりする。(特にヒット曲が最初にあって話を取ってつけたような作品は後者のケースで違和感満載な事が多い)

しかし、このミュージカルの曲は粒が揃っている。わかりやすくキャッチ―な曲が多い。そしてアンドリューロイドウェバーのファンなら気づくような歴代の彼の曲をモチーフにしたメロディがチョイチョイ劇中に使われる。そんなささやかな楽しみも隠されている。

楽曲のバランスの良さ

スクール・オブ・ロックはタイトル通りロックバンドを組む大人と小学生の話なので、ノリノリの曲が多い。しかし、それが2時間続くともちろん観客はうんざりしてしまうので、オン(ノリノリ)・オフ(ほんわり)な曲を両ジャンルともキャッチ―に作って組み合わせている。この「激しいロック」+「ほんわりイージーリスニング」のバランスはミュージカルの流れをダイナミックにしてくれるので、観客も話に引き込まれたまま最後まで飽きることなく見続けられる。すでに展開が分かっていたとしても・・・だ。

実際に、アンドリューロイドウェバーは作曲にあたって「観客のことを考えたら2時間もの間メタルをやるわけにいかないから」と考えて楽曲提供をしたらしい。

で、出来上がったこのミュージカルを見てみると、シーンごとのムードにばっちりあった曲を各所入れてるのだ・・・。コーラスワークもウマく盛り上げる感じで嵌っているしx覚えやすくて歌いやすい(簡単)なのだ。子供が多く参加するから必然的にそうなったのかもしれないが。

さすがアンドリューロイドウェバー・・・と思ったけれど、オペラ座の怪人の続編「love never dies」は連日劇場が空っぽで見に来た人が心苦しいと感じるぐらいだったらしいので、すべてのアンドリュー・ロイド・ウェバー作品の楽曲が魅力的なわけではないのだろう。

臨場感あるステージづくり

スクール・オブ・ロックは舞台上で生の劇中コンサートをすることが前提となった作りだ。

オープニングは劇中バンドのコンサートから始まり、ラストはスクール・オブ・ロックのコンサートシーン。コンサートに始まってコンサートに終わるミュージカルだ。

そんなスクール・オブ・ロックの舞台の中心部は半円になって観客側にせり出している。客席は後ろに延々と伸びる通常の劇場タイプではなく、この半円ステージを囲むようにして広がるタイプで横に広い。このタイプの客席のほうが舞台との距離も物理的には短く、演奏中ステージの臨場感を感じやすい。

また、各シーンもこの舞台の中心部分に集中してセットされ、両サイドの壁と距離があるため、端っこの方の席から舞台を見ても比較的何が起こっているか見やすい。

通常のステージだと、両サイドに座っている人は自分の座ってる側の端で起こってることが完全に死角になってしまうことも多く、何となく集中力がそがれる。(それに見ようとして首が痛くなる)また、あんまり後ろの方の安い席だと、本当に遠すぎて迫力が全くないなんてザラ・・・。

しかし、この真ん中のせり出た半円で集中してセットする感じだと、アングルは正面でなかったとしても全体を見て感じる事ができるので、劇との一体感を感じやすいと思う。

何より、この客席配置で最後のロックコンサートシーンに突入するとめちゃくちゃ盛り上がる。半円舞台から全方向の観客席に向かってプレイする大勢の子役のエネルギーがさく裂するのを見る・聴く・体感するのは楽しい!

エネルギッシュな演技と演奏

舞台役者にとってロック・ミュージカルはめちゃくちゃエネルギーがいる。

ロックミュージカルは普通のミュージカルと違って、主役の代役率が高い。所謂、予定外の代役=coverではなく、予定されている代役=alternateが定期的にあり回数も多い。それだけ大変なのだ・・・。

スクール・オブ・ロックの主役デューイ役はハードロックにグルーブ利かして歌う・スクリームするはもちろん、劇中の9割がた舞台に出ていて、その間はライトがガンガン照らす中をノリノリで歌いながら走り回り、また飛び降りたり・・・・。しかもかなりのデブキャラなのに、だ。

やる側を想像するとすごい大変だろうなぁとつい心配になるくらい、エネルギッシュ。

現に今期のデューイ役 Stephen Leaskは、夏のこの時期ライトの当たった舞台上の暑さが耐えがたく、1週間演技し続けるのは大変だとツイートしている。

このエネルギーと勢いを毎日保つの?モチベーションが下がる時も何時も?と感心してしまうくらいエネルギーが爆発しているショーは、おそらく英語が全然分からない観光客が見ても楽しめる。

子役の意欲が半端ない

また、この大人のキャストのエネルギッシュさも拍手ものだけれど、それに加え、何よりエネルギー炸裂しているのが子役たちだ。

大人はエネルギー爆発といっても、「お仕事」だしガッツリとコントロールしていることだろう。

だが、12人x3組でショーのローテーションする子役たちは正にステージでの活躍にエネルギーを全身全霊ぶち込んでいる感がある。本当に楽しそうだし。

そのエネルギーと楽しさが伝わってきて、こっちも元気になれる。

演劇 + ライブ で2倍楽しい

あと言わずもがな、ギター/ドラム/ベース/キーボードの楽器担当である子役たちはめちゃ上手い。カッコよく楽しくロックしてる。ラストのコンサートシーンは見せ所だーと言わんばかりに派手に元気にパフォーマンスしてくれます。

そう、このミュージアムの見どころは、歌ものの劇であるというだけでなく、劇中ステージ上で生のコンサートが行われるということ。

個人的にはギターキッドなザック役がイタリア人の男の子だったのが印象に残った。あと、ドラム担当のフレディは男の子の配役だけど、女の子が演じてた。女の子のドラマーってカッコいいし、楽器プレイヤー配役は性別にこだわらない精神が良いなと。

ということで劇としての演技も楽しめるし、ロックコンサートとしてのライブ演奏も楽しめる。1回で2倍楽しいスクール・オブ・ロック the ミュージカル。

ちなみに、劇中バンドのNo Vacancyもすごくリアルに上手い。リードシンガー役の Cameron Sharp はそのままロックバンドのシンガーやれそうなパワフルなボーカルで(正直その日のデューイ代役 Craig Gallivanよりうまいと思った)…とにかく似合っている!

映画版とは違った要素も

映画版は全編にわたってデューイの話――大人になれない大人が教師として子供たちと触れ合ってちょっと成長する――みたいなところに終始している。

それとちょっと違って、ミュージカル版では子供たちにより焦点を当てて作ったようだ。そのため学校の生徒たちの生活環境や心理を掘り下げて描写するシーンが追加されている。各メインキャスト生徒たちと親との関係性が家でのコミュニケーション現場シーンで語られている。

単純な負け犬ロッカーの話ではなく、子供たちのキャラを掘り下げたミュージカルにしたことで、これから成長する子供からティーンエイジャーにも幅広くメッセージ性の部分が共感されやすくなっていると思う。

スクール・オブ・ロック West End公演延長 決定

2016年のウェストエンド公演開始から2年経ったスクールオブロック。少なくともあと1年は公演が延長されることが7月に決定した。

メインキャストも基本的には入れ替わり、今までAlternate(代役)としてデューイ役を演じていたCraig Gallivanが8月からは、そのまま本デューイ役となる。と同時に、子供キャストも「卒業」という形になり、8月末から新規チームが入ることになる。

大人のキャスティング、そして参加するキッズキャストが変わると、また芝居の雰囲気も変わるので何回見ても楽しみどころが見つけやすい作品でもある。

ロンドンまたはニューヨークに行く際に時間があれば、ふら~っと見に行って帰りはエネルギーチャージされて劇場をさること間違いなし。

West End: Gillian Lynne Theatre   最寄り駅:Covent Garden/Holborn/Tottenham Court Road /Leicester Square.

https://uk.schoolofrockthemusical.com/

https://schoolofrockthemusical.com/

 

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この記事を書いた人

Macaron

イタリア語・英語の通訳、翻訳などをしているトライリンガル。しかし仕事をしてるより放浪してる方が多い。